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群青
- 吉田翠
- 2024年2月4日
- 読了時間: 1分
群青
思いを馳せることすらできない古に
牙を収めた獣を
一匹の「人間」と名付けたのは
誰なのか
康寧の闇を破り
繰り返し訪れる東雲を
再び迎え入れる空を今日も仰ぐ
小さくなった人間の
ひとりひとりが持つ不完全な祈りに
もしも神なるものがいるのであれば
この大地に住まう何から守るのだと
問いただすだろうか
安らぎたいのだと
ただそれだけなのだと
願うこの身に
群青の空よ
答えてはくれまいか
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老木 ひと気の消えた一点に再び季節が巡れば 季節が巡れば人々は集い 「国の心に咲く花」と仰ぎ見る 圧倒される程の静を突き抜けるささくれた幹 悠然と立つ葉桜の老木よ