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次の花
- 吉田翠
- 2020年12月16日
- 読了時間: 1分
更新日:2024年1月23日
次の花
落ちる
雨粒を受けるたび輝きを増していた花の色が落ちて 無機質な残像を残しやがて枯れ色に変わる
咲く
固いつぼみの先端がほぐれてとりどりのらっぱがひっそりと鳴る 運んでくるものは熱する前の朝の匂い
いつからだったんだろう 足の踏み場もない雑踏の中で 何かを愛して失って それなのに平然と歩いている姿を わたし自身が冷めた目で見つめていたのは
今朝みつけた朝露をはじく懐かしい花々に 茶色くくすむ過ぎた花々に 次の季節があるのかと聞けば 答えはきっと無言 それはわたしによく似た わたしではない誰かが咲き誇り ほら、変わらずに今年もまたと 瞬間足を止めるシーンに出くわすだけ
立ち上がれなくなるまで泣いてみようか 傷みの雫の中に埋もれてそれからまた
立ってみようか