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残り雨

  • 執筆者の写真: 吉田翠
    吉田翠
  • 2023年2月24日
  • 読了時間: 1分

更新日:2024年1月23日


残り雨



静かに去ろうとする切れ切れの雨音


指の隙間から

ハラハラと落ちていったものを

そのままとどめておけば良かったものを


甦らせた切れ切れの雨音

押し殺していた言葉が口をついて

恐れていた嗚咽に飲み込まれる


浮かんでは消え

消えては浮かぶ言葉の数々は

メロディを欲しがる頼りない詩のようで


雑多な音を剥ぎ落としていた

さっきまでの叩きつける雨が恨めしく

窓に伸びる雨粒の通り道を

爪でひっかいた


雨音は子守唄だとは誰が言ったのか

それがもし本当ならば


乾ききった髪にサテンのリボンが絡みつく

マリオネットのようにわたしも


目を開けたまま眠りにつくのだろう





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