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白い嵐
- 吉田翠
- 2020年12月16日
- 読了時間: 1分
更新日:2024年2月23日
白い嵐
美しくも射抜くような目をした女が
ひとり踊り狂う時
ものの怪のような唸り声を上げて
大地を覆う白が舞い上がる
凍った空間を容赦無く鼓舞する白い嵐
悲しいか
大地から生えたコンクリートの塊が
光の束を集めて薄っすらと笑う
白の唸りは力を削がれ
女は膝をつく
やがて迎えた静寂にその身を横たえ
束の間の夢と知った朝に白の闇は消えた
悲しいのか
柔らかなひとひらが
白銀の世界に溶けていった
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