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白昼夢
- 吉田翠
- 2024年2月11日
- 読了時間: 1分
更新日:3月27日
白昼夢
昼下がりの公園
ベンチに座り噴水を見ていた
ハラリと落ちた木の葉が水面を踊る
少しずつその姿が変わりやがて
白と紺のボディを持った船になる
いつか見た
船女王陛下の名前をいただく船
急に思い出したかのような
昼下がりの白昼夢
さんざめく貴婦人の笑い声
スマートに手をとる殿方
バンドのリズムに合わせて
軽やかなステップ
いつか見た船
ランデブーの行き先はイベリア半島かしらね
いいでしょ素敵でしょ
やがて髪が銀色になり足元があぶなっかしくなっても
あんなふうに手を取って歩いてくれるのかしら
きっとそうなると
思っているの
思っていたいの
女王陛下の名前をいただく船
昼下がりの白昼夢
どうかしてるわね
でもあと少しだけ
少しだけそのままで
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