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ある祈り
- 吉田翠
- 2022年1月23日
- 読了時間: 1分
更新日:2024年2月12日
ある祈り
頭をさげたひまわりの姿 晩夏を鼓舞するレクイエムに 永遠の狭間に溺れていこうと もがくわたしの腕を掴んだ熱風
気がつけば
引き上げられた場所に連なる
セミの薄羽のような
薄桃色の花弁が捧げる祈り
一瞬酔いしれた後に
呼び寄せられた静寂は
生み出すための歓喜
欠けてゆく熱を腹に溜めたまま
成熟へ
枯れ始めたひまわりよひまわりの花よ
今
再びのさらば
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