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彼の方に
- 吉田翠
- 2020年12月16日
- 読了時間: 1分
更新日:2024年1月23日
彼の方に
月の満ち欠けを感じるたびに 君を想う ひと夜ごとに透き通り 儚くなりゆくその身体 けれど哀しみをたたえたとは 嘘だった瞳 ただ見ていた 目の中にあるその捨てがたき星を 満ちる時には大輪の花を咲かせ そして欠ける時には声すら潜めて 幾たびもそれを繰り返す まるでそれは月に住む彼の方のように 残り香だけを置き去りにした人 狂おしいほどの思慕 今夜は何処に 手の届かぬどこでその華を見せているのか ハラリと落ちる時 沈む君の身体は また目の中にある捨てがたき星を 探し始めるのだろう