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白波の浜
- 吉田翠
- 2024年7月13日
- 読了時間: 1分
白波の浜
さらわれて立つ
足元の儚さは
繰り返し繰り返し
寄せては返す
波に消える我が身の影絵
じっと見つめる先には
一点の答えすらない
ただ碧と青の境界を
染め落ちるしろがねの陽
寄せては返す罪と罰
この身がさらわれてさえゆけば
果たして
消えてなくなるものなのか
そんな事はあるまいと
遠く遠くから
入り込む懐かしい声
立ち尽くす
白波の浜
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