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- 吉田翠
- 2024年1月29日
- 読了時間: 1分
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なんびとも
知らぬ存ぜぬを決め込めば
我が身を恥じる事もなく
見ざる聞かざるで
ただ首筋に入った深い皺と
胸の奥深くに落ちた
一点のシミに狼狽えれば済んだものを
暖色のクリップライトを避けながら
花として結実することもなく
はらはらとこぼれる花弁は
目のふちに留まりきれなかった真
噛んだ唇から滲むものを捧げ尽くすのは
女の業
月の冷たくなる夜に
繰り返し繰り返し溺れては生まれ変わる
狂おしいほどにわたしは鬼の子
哀しみとはどんな唇からもれる言葉か
わたしは
ただの鬼の子
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