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「おかえり」と
- 吉田翠
- 4月22日
- 読了時間: 1分
更新日:5月4日
「おかえり」と
何者になろうと望んだのか
大きく手足をバタつかせて
薄暗い森の奥へ奥へと行ってしまった
聡明と愚昧
友達として囁いた小鳥達は
あなたをふたりにしてしまったわけではなかろうに
泣いて泣いて引き裂かれたのは
きっと小さなハート
チラチラと陽を浴びた
薄く光る花に囲まれて
それでも
おそらく枝を折りながら
ずっと叫んでいるのでしょ
ここで待ち構える
トゲの刺さったわたしの手には
黄ばんだひと巻きの包帯
懺悔の声はとうに枯れた
そこは安全なのか
わたしの希望は傲慢を極め
生臭い人間の我欲だと知っても尚
口ににしたいと願う
わたしが目を瞑る前におかえり
と