検索
すすきの穂
- 吉田翠
- 2024年3月9日
- 読了時間: 1分
すすきの穂
じゃあまたねと母は手をふった
ちいさな背を折らずに歩く後ろ姿
髪染めをやめた白髪は
柔らかく哀しい
これから手を合わせる時はどうか
どうか自分のことを祈ってください
母親とは
どうしてもそれができないものだと
一番良く知っているのにわたしは
わたしはそう思わずにはいられない
ぴんと冴える冬の空
すすきの白く
豊かな穂が風を受けてそよぎ
母の髪を思う
目に焼き付ける姿を
繰り返し変えながら
まだまだだ
娘と母親のまだ道のりは遠く遠く
遠く続く
最新記事
すべて表示離る 今が盛りのひと枝よ 薄い花弁が茜に染まる 黄昏に あとの息吹を守らんと そのひとひらがただ離れ 落つ 散ってこそが花 なりと * この詩はこちらの企画の参加作品です。 一枚の葉に収まるような短めの詩を募集されています。 葉篇詩・マガジン...
日、晴る 梢でゆれる 目覚めたばかりの若葉 巣作りの場所を決める前の いっときを遊ぶように 近くをいったりきたの雲雀が それをつつく 遠く離れた水のせせらぎ 匂いを絡めた風の道 本当に うららかとは そこに居る者のこころが 見聞きし映り込んだ絵図に相違なく 春の雲雀...
その一葉 詩 取り残された一葉が 風に吹かれて身を離す この時に抗うわけでも ましてや待つでもなく ただ落ちる 小川の水面をゆらゆらと 役目を終える葉を抱え 水の流れのその先にあるものは 恐らく次の春 少し眩しい日の光に 手を翳したわたしは 運ばれるままの一葉を 見送った...