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ひぐらしが鳴く

  • 執筆者の写真: 吉田翠
    吉田翠
  • 2020年12月18日
  • 読了時間: 1分

更新日:2024年1月23日

ひぐらしが鳴く


そもそもが 自分のものではないものを

はらはらと 目の前を落ちてゆくものを


一瞬の眩しいあかりが力なく揺らいで

差し出しそうになる掌を

思わず押しとどめたものは 霞のように不確かな後悔と 頬に落ちた懺悔


今はまだ聞きたく無かったひぐらしの 羽をこすり鳴く音に やがて迫る夕日を追い払い 我に帰るためにわたしは

いくばくかの力を込めて


影を踏む 







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