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バスに揺られて

  • 執筆者の写真: 吉田翠
    吉田翠
  • 4月21日
  • 読了時間: 1分

更新日:4月24日

バスに揺られて



マイクロバスに揺られて

運転手の鼻歌は

ガイドの代わり  

小難しい政治絡みの云々も

対立する民族がいた歴史も

窓の外に広がる過不足のない一瞬が

全て承知の上で道をあけろと偉そうに笑う


そうだ

このバスが向かう先は

あんなにも憧れた伝説の土地

絵に描いたような男も女も

いつぞやの時間に住む老人も

悪巧みに飽きた子供も

好き勝手にお伽話を持ち込んでは

指を指す地平線

何が見えたか 

思い通りだったのか

押し黙る唇が人を恋しがる


ふらりと乗ったマイクロバス

黄昏が来る前に深呼吸をすれば

ガイド代わりの鼻歌が終わる頃

なんにも意に返さないマイクロバスは止まる


ステップを降りればそこは

灯りの増えた元の場所

目をこらすまでもなく

諦めの悪い過不足が


どうしようもなく眩しかった



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