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一筆したため春薄暮

  • 執筆者の写真: 吉田翠
    吉田翠
  • 2024年1月11日
  • 読了時間: 1分

更新日:2024年1月23日


一筆したため春薄暮



前略貴女様随分と笑顔を見せてくれるようになったと思います。

貴女のお母さんはやはり苦労の連続でしたが、いつもお話しているように大丈夫なのですよ。

思い出してください。

髪をとかしてくれるのはお母さん。ぼろぼろの子犬のぬいぐるみを繕ってくれたのもお母さん。三輪車を押してくれたのもお母さん。

お母さんは大丈夫です。

きっと幸せになりますよ。

そして貴女を捨てたり、ましてや殺めたりなどあろうはずはありません。

だから貴女は安心して、迷子にならないようにしてくださいね。


お母さんを探して泣いて泣いて、泣き止んでまた泣いて、そんな貴女を抱きしめてあげられるのは、わたしが貴女だからです。

大人になった貴女だからです。

随分と暖かくなり、新芽の匂いに包まれるこの頃。

今は静かな夕暮れ時です。

こうやってお話できるのはあとどれくらいでしょう。

貴女が安心していなくなるまでわたしは待ちましょう。

大丈夫、きっと大丈夫。

わたしはそれを知っていますから。

かしこ


追伸間違えていた事に気付くのは、どうか大人のわたしに任せてくださいね。






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