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咲くやさくや・永遠なれと謳ふ者

  • 執筆者の写真: 吉田翠
    吉田翠
  • 2024年2月1日
  • 読了時間: 2分


咲くやさくや  

【木花咲耶姫】



咲くや咲くやどの花咲くや


コノハナ咲くやと唄ひつつ


不義を疑われるとは口惜しや


ならば


めらめら上がる炎のなかで


誠をお見せいたしましょう


咲くや咲くやどの花咲くや


コノハナ咲くやと唄ひつつ


晴れて柱を送り出し


やがて国土の祖とならん


さあ さあいかに


いかにおなごの怒りを鎮めましょうや


あはれと化して後の世まで


語らるるとは尚口惜しや


さすれば火を守り水を守り


見渡す限りの雲に囲まれ


その胎内を清めようぞ


咲くや咲くやどの花咲くや


コノハナ咲くやと唄ひつつ



霊峰の頂に眠らん




永遠なれと謳ふ者 

【磐長姫】



石 


しんしんと


深い水の底ですら命を永らへる


永遠なれと謳ふわたしは磐長


姉妹で嫁いでおきながら


醜い顔に生まれついたがため


粗末に送り返さるとは


受けたこの身のなんたる恥ずかしさ


天孫瓊々杵尊


何を持って忘られようぞ


かたや妹


美しきその姿をもってして


不義を疑わるとはあはれなもの


悔しさ募り

 

火中の産屋で三柱を産み落とせし覚悟


あっぱれなり


されどこの身の口惜しさ


追はれた以上情けはかけぬ


たとえ柱が国土の祖であろうとも


さあさあいかにせばいかがせば


不老不死を授けられようぞ


情の怖さを懐に秘め


千の思ひと引き換へに


我が身を深き水底に



脈々と流るる


終古の時に泳ぎ泳ぎて

 

死しても朽ちないわたしは磐長


永遠なれと謳ふ者


いつの日か晴れて願へる時が来ば


水底よりその折こそわたしは叫ぶ


我が国土に力あれ



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