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砂の海で眠れば
- 吉田翠
- 2020年12月16日
- 読了時間: 1分
更新日:2024年1月23日
砂の海で眠れば
サラ サラ サラー 指の隙間をすりぬける粒子 目の前に広がるものは 少し熱を持った嵐の後の砂漠
それは規則正しい波を従えた 何者をも寄せ付けないはずの 砂海 あの時 手を伸ばせば星をつかめそうな 輝きを放つ摩天楼の中で どうしてわたしは笑っていたの 少し憂いを含んだ唇は 艶やかなルージュがよく似合う 軽やかなステップで 何を演じていたの 周りを囲む人々は半透明だったのに 乾いた嵐が過ぎた後 この砂海にあったはずの摩天楼が 消えた 指の隙間からすりぬけてゆく 全てがうつつの蜃気楼 わたしはいくばくかの喜びを秘め 砂の海に沈んだ