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砂の海で眠れば
- 吉田翠
- 2020年12月16日
- 読了時間: 1分
更新日:2024年1月23日
砂の海で眠れば
サラ サラ サラー 指の隙間をすりぬける粒子 目の前に広がるものは 少し熱を持った嵐の後の砂漠
それは規則正しい波を従えた 何者をも寄せ付けないはずの 砂海 あの時 手を伸ばせば星をつかめそうな 輝きを放つ摩天楼の中で どうしてわたしは笑っていたの 少し憂いを含んだ唇は 艶やかなルージュがよく似合う 軽やかなステップで 何を演じていたの 周りを囲む人々は半透明だったのに 乾いた嵐が過ぎた後 この砂海にあったはずの摩天楼が 消えた 指の隙間からすりぬけてゆく 全てがうつつの蜃気楼 わたしはいくばくかの喜びを秘め 砂の海に沈んだ
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すべて表示雪の乱 龍の眼から伸びる 弾かれた弦のいち音が 腹に落ちる 舞い上がる雪が隠していた色は 花の薄紅か血のりの赤か 助けを呼ぶのは凍る月 乱れるままに踊る雪の 後を追う流し爪 ひと夜雪に凍え雪に焦がれ 燃える箏のしらべよ
彼の方に 月の満ち欠けを感じるたびに 君を想う ひと夜ごとに透き通り 儚くなりゆくその身体 けれど哀しみをたたえたとは 嘘だった瞳 ただ見ていた 目の中にあるその捨てがたき星を 満ちる時には大輪の花を咲かせ そして欠ける時には声すら潜めて 幾たびもそれを繰り返す...
白に溺れて 白の花ばかりを愛する人 可憐で純真な闇に包まれて 泣くのでしょう 地面から眺める空が こころを引き裂きいたぶるのだと 泣くのでしょう 薄く伸びる光の帯に絡まれながら流す涙は もう充分に 蜂蜜のように甘く甘く 染みをつけたでしょ 泣きなさい...